タワーマンション節税
令和4年4月に相続税について注目の最高裁判決がありました。
訴訟の内容としては、相続したマンションなどの相続税について、追徴課税された約3億3000万円の取り消しを国に求めたものです。(訴訟の内容の詳細については、各メディアや判例解説等を調べてください。)
訴訟で争われたのは、いわゆるタワマン節税といわれる手法で、銀行からの借入金でタワーマンションの高層階を購入すると、購入したマンションの評価額が購入価格よりもかなり低くなることを利用して、相続税を圧縮するというものです。
通常、相続税で相続財産を評価する場合には「財産評価基本通達」に基づいて評価を行い、マンションなどの建物については固定資産税評価額を基に評価をすることとなっています。
しかし、大都市のタワーマンションなどは、高層階の部屋と低層階の部屋では販売価格は大きく異なり、高層階は億を超えるものも珍しくありませんが、建物の評価に用いる固定資産税の評価額は床面積に応じて金額が決まるため、高層階と低層階でも床面積が同じであれば、評価額も同じになります。
そのため、実際の売買価格と相続税の評価額に大きく差が出ることが問題となっており、評価額が実際の売買価格の2割~3割程度に抑えられる場合もあります。
そこで、国税側が財産評価基本通達6項の「この通達の定めによりがたい場合の評価」を適用して、原則的な建物の評価方法を適用せず、売買価格を基にした評価を行ったのが今回の事例になります。
判決は、この6項の「この通達の定めによりがたい場合の評価」の適用は有効であるとして上告を棄却し、納税者側の敗訴が確定しています。
(この通達の定めにより難い場合の評価)
昭和39年4月25日付直資56、直審(資)17「相続税財産評価に関する基本通達」
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
さて、この判決について注目されている点の一つとしては、財産評価基本通達に定められている方法どおりに評価して申告されたとしても、「著しく不適当」と判断された場合には、別の評価方法で評価されてしまうということです。
ただ、どのような場合でも「著しく不適当」となるかといえば、そこはかなり制限がかかっていると言ってよいかと思います。(この辺の判断基準については、過去の判例研究等を調べてください。)
今回のタワマン節税の図式は、
・相続開始前にマンションを購入(評価額が2~3割程度に圧縮)
→相続開始・・・マンションの評価額で相続税申告
→相続後にマンションを売る(都会のタワマンはあまり値下がりしないため、もともとの購入金額程度で売却できる)
とすることで、相続税の圧縮のためだけにマンションを売買して、あまり損もしないということになるのです。
このような、実態を伴わない租税回避だけを狙った経済行為によって税金を安くするような行為っていうのは、税務当局が非常に嫌うやり方になるので、通達にある「著しく不適当」と判断して課税に至ったということでしょう。
最高裁の判決文でも「本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。」と判断がされていて、他の納税者との租税負担の不公平から今回の課税が認められるという結論になったようですね。
現在も、ホームページやセミナーなどで税金を安くする手法がいろいろと紹介されていますが、あまりに課税の不公平さを誘引するような租税回避行為は税務当局に目を付けられるリスクが内包されていることを考えておかないといけないですね。